おなかにてあて

子どもに伝えるおなかのお話

十里四方の暮らし

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「母から十里四方のものを食べていたら間違いないよと、よく言われていたんですよ。」

当院に長年通ってくれている70代の女性からこんなお話を聞かせてもらいました。詳しく聞いてみると、半径五里(約20㎞)の範囲で採れる食べ物を食べて生活していたら健康でいられると教えられたそうです。江戸時代には刑罰として十里四方追放というのがあって、罰として住んでいる地域から追い出されました。昔から十里四方の範囲が日本人の生活範囲と考えていました。

私の治療院の庭には小さいですが自然農法の畑があり、私はこの畑をいじっている時が一番ホッとします。難しいことなど考えずに、ただ実りを楽しみに緑や土に触れる。こんな楽しいことはありません。こんな時間だけ過ごし生活できたらと思いますがそうもいかないのです。今地域にある色々な問題とも向き合っていかなくてはなりません。

近代は流通が発達し、世界各国の食べ物をどこにいても手に入れることができるようになりました。ちょっと足を伸ばしお店に行けば魅力的に見える食べ物がずらっと並んでいます。しかし残念ながら、今の日本では身近で安全な食べ物を手に入れることが難しくなっているようです。農薬や添加物、遺伝子組換え、身体のためには良くないものでも売れるためなら良いかのように着飾って売る。私のように田舎に暮らしていれば全て安全と言うわけではありません。むしろ情報が不足しがちな環境の中で正しい情報を自ら取りにいき、どんな暮らしを目指せばいいのか考えていかないと情報や物流に振り回されて足元が見えなくなってしまいます。

私が暮らしている村にはまだまだ自然が残っていて、暮らし立つ自分の足元がいつまでも美しく豊かであってほしいと願っています。村には自然に沿った風習を大切に残そうとしたり、安全な野菜を作るためがんばっている方々もたくさんいます。私も十里四方のそんな人々と触れ合いながら、自分自身が健康で心地よく暮らし、健康のお役に立ち暮らしていきたいと思います。

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